※名無しのオリキャラが出てきます。

 

 

 







私は今、とある二人の取材を極秘に行っている。

 

 

 

 

 

友枝中の仲良しさん










「小狼くん、どこでお弁当食べるの?」
「こっちだ、さくら」
ついこの間まで夏の容赦ない日差しが照り付けていたのに、気候はすっかり秋だ。透き通った水色の空に、羊雲。穏やかに吹く風は秋の匂いがした。
(学校じゃなかったら寝ていたい気候だわ)
思わずぼんやりしてしまう。ハッと気づいて、気を引き締めるように頬を抓った。
建物の影に隠れて、『標的(ターゲット)』の姿を目視する。二人が歩いた道には花が咲くんじゃないかと思うくらいに、ふわふわとした甘い空気だ。後姿からもその仲睦まじい様子が窺える。
(いいわよいいわよ~~~。それでこそ、『友枝中ベストカップル』の名にふさわしい二人だわ~)
ニヤニヤと笑みを湛えながら、連れ立って歩く二人を観察する。持っていたデジカメで二人の姿を逐一撮影しつつ、置いていかれないよう、気付かれないよう、一定の距離を保ちながら尾行する。
『標的(ターゲット)』は二人―――李小狼と、木之本さくら。友枝中学校の二年生。
李小狼は生まれも育ちも香港だが、小学校の時に単身でこの友枝町に来て数年暮らしていたらしい。そして小学校卒業前に香港へと帰り、中学入学時に再び友枝町へと戻ってきた。家族構成や来日の理由など、詳細は不明。
成績は優秀で教師の評判もよく、男女ともに一目置かれている存在だ。整った顔立ちに加え、成長期の為か最近は背も伸びて、女子生徒の注目を集めている。
木之本桜はチアリーディング部に所属しており、一年生の頃からレギュラーメンバーとして大会にも出場している。成績は中の中。英語と数学が少し苦手のようだが、他はいたって凡庸。体育の成績はすこぶる良い。家族構成は父と兄。母は幼い時に他界。
男子生徒に絶大な人気を誇るも、彼女の「ふんわり」な性格と小狼の存在がネックになり、表立ってアプローチする者は少ない。
二人の出会いは小学校時代。李小狼が同じクラスに転入してきた事がきっかけだが、当時のクラスメイトに確認したところ、特別に仲が良かった印象はないとの事。「李くんの方がさくらちゃんに執拗に絡んでいた」「木之本さんのお兄さんを巻き込んで乱闘騒ぎになった」―――など、およそ今の二人からは想像がつかない目撃証言もあり。
共通点の少ない二人だが、中学に入学する時には既に恋人としてお付き合いを始めていたという事を、彼らの友人(T・Y)が証言。同人物より別の情報も入手したが、本当か嘘か判別がつきにくい事案だった為、省略。
(どんな馴れ初めがあって今こんなバカップルになってるのか、手っ取り早く本人達にインタビューしたい・・・!でも相当な照れ屋さんらしいから、インタビューに応じてくれるかどうかは微妙ね)
取材ノートにびっしりと書きこまれた自分の文字を追いながら、乾いた唇を舐める。
件の二人はと言うと、やっと目的地についたらしく、足を止めた。李小狼は持参したピクニックシートを芝生の上に広げ、その上に木之本さくらがお弁当を広げだした。
「すごぉい。ここ、金木犀が咲いてるんだね。いい匂い」
「少し前に見つけたんだ。さくらに見せたくて。・・・その。喜んで、くれたか?」
「うんっ!・・・えへへ。嬉しい。ありがと、小狼くん」
ふわりと零れた笑顔に、小狼は耳まで顔を真っ赤にした。
笑顔を交わす二人。歯の浮きそうな甘いセリフ。ドラマや漫画の中だけかと思いきや、こうして現実にも存在しているというのだから驚きだ。ずり落ちた眼鏡を抑え、今耳にした会話をノートに書きこむ。もちろん、写真撮影も忘れない。
(ルックスが良くて優しくて親切で。勉強も出来て運動も出来る。はぁ~。非の打ち所がないスパダリだわ。それなのに、当の本人は彼女一筋で甲斐甲斐しく世話までやいて。・・・はぁ。これは女子にモテるのも頷けるわね)
中学生にしては大人びた所作と笑顔を、レンズ越しに見て思わずどきりと心臓を鳴らす。いやいや取材取材、と言い聞かせて、邪魔な感情を隅に追いやる。
(それにしても・・・。たかが金木犀を見せる為だけに、限られた昼休みにこんな遠くまで来るなんて、カップルの考える事はわからないわ~。まあ、彼女が本心で喜んでるかどうか謎だけど)
彼女―――木之本さくらの笑顔は、ひたすらに眩しい。元気で可愛くて、男子にも女子にも人気で、こんなに優しい彼氏に毎日愛されて。そりゃ少しの労力も苦にならないくらいに幸せだろう。羨ましいと思う余地もない。嫉妬や羨望を通り越して、別世界の人間を見ているようだ。
ちりちり、胸の奥が痺れる。
嫉妬や羨望はない。けれど。
(非の打ち所がない美男美女カップル・・・って、記事としては無難だけど、面白みに欠けるのよねぇ。どうせなら、誰も知らない裏の顔・・・見たくない?)
好奇心が膨らむ。少々ちぐはぐに思える標的の二人。もしかしたら、まだ誰も知らない『謎』が隠されているかもしれない。そう思ったら、知りたいと思う欲求が止まらなくなった。ゴシップ好きの血―――もとい、新聞記者志望の血が沸き立つ。
「・・・どうしたの?小狼くん」
さくらが黄金のふわふわ卵焼きをひとつ取って、今まさに小狼の口の中へ運ぼうかという瞬間。小狼は表情を強張らせ、周囲を見回した。一瞬で空気が張り詰める。
慌てて身を隠し、呼吸を止めた。大丈夫。距離を取っているから、そうそう気付かれない筈だ。
「・・・誰かがいる。俺達を見てる」
―――ドキィッ!!
確信的な言葉。冷静な口調。冷たく落ちた声。なぜか、心臓をぎゅうと握られているような緊張感が全身を駆け巡り、体が硬直した。
「ほぇ?誰だろ?私達の他に、ここでご飯食べてる人はいないみたいだけど」
広々とした芝生の上でピクニックをしているのは当人達のみ。それは、誰の目から見ても明らかだ。小狼が意識的に張った警戒の渦にのまれる事なく、さくらはのほほんとした様子で首を傾げる。
「誰もいないよ?」
「魔力の気配は・・・ない。・・・結界にも―――」
「考えすぎだよ、小狼くん」
「もしかしたら・・・―――が、感知できない相手・・・魔導士・・・」
小声になったせいか、会話がよく聞き取れない。それ以前に、体が金縛りにあったようで、自分の心臓の音がやけに大きく響いていた。
―――その時。
美味しそうな弁当の匂いにさそわれてか、雀が二羽、ぴちちと可愛らしく囀りながら地上へと下りてきた。
「あっ。小狼くん、スズメさんだよ!そうだ、小狼くんが感じた視線も、きっとこの子達だよ!ねっ」
あまりに暢気すぎる彼女の言葉に、思わずガクッとずっこける。しかし不思議と、全身を巡っていた妙な緊張感がなくなった。
気付かれないようそっと窺うと、小狼は彼女の発言に呆気にとられたあと、眉を下げて笑った。『仕方ないな』と言わんばかりの、甘い笑顔。
(・・・っ!!うわぁぁ、い、今の笑顔なに!?か、カメラ!あっ、一瞬で消え・・・幻!?)
動揺して思わずカメラを落としそうになる。ここで気づかれたら終わりだ。なんとか堪え、落ち着けと言い聞かせながら深呼吸をして、再び二人の様子を窺った。
「はい、小狼くん。早く食べないと、卵焼きスズメさんに取られちゃうよ?」
「・・・それは困る。さくらの卵焼きは、俺のだ」
真顔でそう言うと、彼女の手ずから差し出された卵焼きに、ぱくりと食いついた。
赤い顔で笑うさくらの顔を、こっそりと撮影する。二人きりのピクニックは、チャイムが鳴るまで続いた。








李くんと木之本さんの(極秘)密着取材は、その後も続いた。
彼女がチアリーディング部の練習がある時は、彼は図書室で待っている事が多い。時々こっそりと練習を見守っている事もある。
小狼は常に周囲を気にしており、鋭い眼光に何度も怯んだ。気を緩めると見つかってしまいそうな、ギリギリの綱渡り取材も、日を追うごとに逆に燃えてきた。
(ふふふ・・・っ、私の記者魂を舐めないでほしいわ!むしろ、あんなに警戒するって事は何か隠してる事がある筈!絶対に突き止めてやるわ~!)
「部長。部長!まだ出来ないんですか、あの記事。校内のカップルを適当に紹介するだけでしょ」
「甘い!それで生徒みんなに楽しんでもらえると思う!?黙って見てなさい、みんなが驚くようなすごい事実を突き止めるから!」
「・・・また変に暴走して、相手に訴えられないでくださいよ」
呆れた後輩の助言も意に介さず、今日も二人の密着取材を開始した。
「今日は臨時の委員会があるんだ。教室で待ってて」
「あ、あの。小狼くん、大丈夫だよ。今日は知世ちゃん達と一緒に帰るから」
ホームルームが終わって、人でごった返す廊下の中、二人の会話を盗み聞く。
笑ってはいるけれど、小狼から発せられるピリピリとした空気に、心なしかさくらの笑顔も曇っているような気がした。
「・・・ダメ。俺の言う事、聞いて。さくら」
穏やかな口調なのに、有無を言わせない迫力があった。
不審に思われないよう、人の波に紛れてそこから離れる。
(やっぱり・・・!李くん、何か裏の顔がありそう。しかも、木之本さんもそれに気づいてる?もしかして何か弱みを握られてたりして・・・?)
あらぬ妄想が次から次へと出てくる。しかし、決定打となる証拠がない。悶々としながら、小狼の委員会が終わるのを待っていた。









西の空が夕日で赤く染まる頃。委員会を終えた小狼は、さくらが待つ教室へと小走りでやってきた。心配そうにする小狼に、さくらは「おつかれさま」と笑った。
(やっと委員会終わったのね。今日こそは、何か決定的な裏の顔を見つけるわよ・・・!)
ベランダに隠れて二人の様子を見張っていたら、思わぬ乱入者が現れた。
「失礼する!突然だが李小狼、君に話がある」
現れたのは道着姿の大柄の男だった。見覚えがある。おそらく、柔道部の主将だ。一体何が始まるのだと、突然の展開に驚いていたら、更なる人数が教室に入ってきた。
「ちょっと待て柔道部!お前の順番はあとだ!勧誘は我が空手部が先に!」
「話が違う!さっき公正に順番を決めただろ!最初はサッカー部が話をする」
「何言ってるんだ、俺達の陸上部にこそ必要だ!」
各々の部活のユニフォームに身を包んだ上級生達が、ぞろぞろと入ってきた。その面子を見て、ベランダで「なるほど」と納得する。
(柔道、空手、サッカー、陸上。どれも秋の大会で勝ち進んだ部だわ。なるほど、全国大会の前に李くんに助っ人を頼もうっていう魂胆ね。でも・・・、運動神経がいいからサッカーや陸上はわかるけど、空手とか柔道も?喧嘩とかできるタイプには見えないけど)
やってきた上級生に比べると、体も小さく痩せている小狼は、些か頼りなく思えた。
驚くさくらを後ろに庇うようにして、小狼は突然に押し入ってきた先輩達を睨んだ。
「もう何度もお断りしてる筈です。入部も助っ人も無理です」
ばっさりと斬り捨てるような回答に、上級生達は揃って青筋を浮かべた。
「人が下手に出ていれば・・・!ここまで頭を下げているのに、断るのか!」
「李くん、君はやることがあると言っていたが、毎日彼女の木之本さんと楽しく遊んでいるだけじゃないのか!?学生ならば、もっと有意義に時間を過ごそうとは思わないか!?」
四人は大きな体躯で小狼とさくらを囲み、威圧する。「ほえぇぇぇ」と戸惑うさくらを背に、小狼は一層に顔を顰めた。一際体の大きい柔道部が、少々強引な行動に出た。
「女と遊んでばかりでは腑抜けてしまうぞ!特別に稽古をつけてやる!」
そう言って、小狼の襟元をグローブみたいな手で掴んだ。
予想外の展開に興奮して、思わずベランダの窓から乗り出してカメラを構えた。さくらの小さな悲鳴が響いた瞬間、それは起こった。
(・・・は?)
時が止まったのかと思った。いや、突然に早送りされたのか。カメラのシャッターを押す間もなく、勝負は終わっていた。
柔道部主将が小狼の襟元を掴んで、そのまま片手で宙に持ち上げられるかと思った一瞬。小狼は両足に力を入れ、歯を食いしばった。
その一瞬のあと。―――なぜか教室の床に大の字に倒れていたのは柔道部主将だった。
途中経過がない。余所見をしていたわけでもないのに、突然に場面が切り替わったかのように思えた。それは自分だけではないようで、近くで見ていた他の上級生も、投げられた当人も、皆一様に言葉を無くしていた。
小狼は乱れた襟元を直して、駆け寄るさくらに「大丈夫だ」と言った。呼吸一つ乱れていない。そうして、呆然として倒れている主将を見下ろして、言った。
「・・・『まだ』お話がありますか?」
こちらには背を向けているので、彼がどんな顔をしてそれを言ったのかはわからない。しかし、乱入者達の顔が揃って青褪め、逃げるように教室を出て行ったのを見て、肌がぞわぞわと粟立った。
成績は優秀で教師の評判もよく、男女ともに一目置かれている存在。―――誰しもがそう思っているだろう。だけど、本当の彼は違う一面も持っている。この調査を通してそれを知ることが出来た。
(や、やばい・・・。私、すごくドキドキしてる。知りたい。謎に包まれた李くんの事。もっと知りたい!)
心臓が忙しなく暴れている。頬が熱い。なんだろう、これはもしかして『恋』だろうか。カメラのレンズを通して見える、彼の意外な一面に、夢中になっている自分がいた。
教室で向かい合う二人をフレームにいれながら、息を潜める。
「ここ最近、小狼くんが感じてた人の気配って、今の人達だったのかな?」
「いや。違う。・・・もう一人。今も『ここ』にいる」
―――ドキィッ!!!
(李くん、気づいてる・・・!?)
不思議な感覚だった。見つかってしまう恐怖も勿論あった。だけどそれ以上に、自分の存在を見つけてほしい、知ってほしいという新たな欲求が芽生えた。興奮で上がる呼吸を必死に抑え、震えそうな全身を叱咤し、カメラを構え続けた。
彼の視線が探り当てる。ここ数日ずっと傍にいた自分を。鋭い眼光が、綺麗な瞳が、こちらを向く。獰猛な獣が獲物へと注ぐような視線。「逃がさない」という強烈な殺気。
―――見つかる―――
しかし。その瞬間は訪れなかった。
突然に、怖いくらいに張り詰めていた空気がやわらいだ。
呆気なく金縛りは解けて、反動で手足は痺れ力が入らなくなる。その場にずるずると座り込んだ。その時になって初めて、自分が無意識に呼吸を止めていたのだと知る。遅れてやってきた激しい動悸。頭の中を金槌で叩かれているような衝撃が続いた。
カメラのモニターを見る。小狼の正面から、さくらが強く抱き着いていた。その目には、涙が浮かんでいて。小狼は先程までの表情から一転して、焦った顔でさくらの名前を呼び、宥めるように背中を撫でていた。
「さ、さくら?どうした?」
「・・・もう、いい。小狼くん。心配しなくても大丈夫だよ。もう、悪い人はいないよ」
「―――!」
「もう、あんな事にはならないから。・・・小狼くんの前から、いなくなったりしないから。だから。一人で苦しんじゃヤダよぉ」
最後の方は涙声で、しゃくり上げながらだったけれど。その不明瞭な言葉に、小狼は辛そうに顔を歪めた。そうして、さくらを力いっぱいに抱きしめる。
「・・・ごめん、さくら。俺が一番、さくらを不安にさせてた」
「そんな事ない。でも・・・私も一緒にいるよ。一緒に頑張れるよ。また・・・あの時みたいなことがあっても。絶対に絶対に、小狼くんから離れないから!」
「うん・・・」
「ぜったい、だいじょうぶだよ」
涙をいっぱいに溜めて、涙声で。頼りなく思える少女のその言葉は、凛としていて真っ直ぐで、心に響いた。小狼は泣きそうな顔で笑って、さくらの頬を撫でる。さくらは目を閉じて、小狼の手に嬉しそうに頬ずりした。
―――それをモニター越しに見つめながら。じくじくと痛む胸を抑えた。これは失恋の痛みか、それとも記者魂を折られた敗北感か。判別のつかない感情で、胸がいっぱいになった。二人の間にある事情や過去、知りたい欲求は消えない。だけどきっと、これ以上は踏み込んでは駄目だ。
(・・・それくらいの分別はあるわよ)
記事にするのはやめよう。すんなりと、決断出来た。そう決めた瞬間、取材対象への興味も恋に似た感情も、面白いくらいに冷めていった。
ふっ、と自嘲して。さっさとここから立ち去ろうと、カメラの電源に手を伸ばした、その時。
「小狼くん・・・」
「さくら・・・」
茜色に染まった教室で、二人は至近距離で互いの瞳を見つめながら、名前を呼ぶ。目に飛び込んできたその光景に、固まる。見たくないと思うのに、目が離せない。
二人の影が一つに重なる。まるで映画のワンシーンのような美しさだった。
しかし。影はびくんと震えて、わたわたと慌てた動作を見せた。
「ご、ごめん。さくら、大丈夫か?」
「う、うん・・・」
「すまない。まだ、慣れてなくて。ぶつかったところ、赤くなってるな。痛くないか?」
「うん・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・も、もういっかい。していいか?こ、今度はその、うまく・・・やるから」
しどろもどろな小狼の言葉に、さくらは一瞬固まったあと、コクコクと何度も頷いた。目を閉じてキスを待つさくらの両肩に手を置いて、小狼も目を閉じる。角度をつけて、ゆっくりと近づいて―――。
「・・・ん」
「・・・♡」
重なる二人のシルエットが、長く伸びる。太陽が西の空に沈む。
失敗と成功を繰り返しながら、二人は何度も何度も唇を重ねた。
日が沈んで教室が暗くなって、やっと「帰ろう」という言葉が出た。離れがたいのか、可愛らしくごねるさくら。全然、これっぽっちも困っていない素振りで、小狼は彼女を甘やかす。
やがて、手を繋いで仲睦まじく教室を出て行った二人。気配が遠のいて足音も聞こえなくなった時。やっと、カメラの電源ボタンを押した。
「な・・・・・・。何を見せられたんだ私は―――!?!??罰!?これは何かの罰ですか神様っ!!!あ、甘すぎて死ぬ―――!!!!!」

―――発狂してしまうほどの甘々地獄。
こうして私は、李くんと木之本さんの極秘取材をやめました。そして。二人の関係には深く関わるべきではないと、その身をもって知る事となったのでした。








「小狼くん!『友枝ジャーナル』だよっ!新しいの出たんだぁ」
「ああ。壁新聞。いつも凝ってるよな」
「・・・!!小狼くん、大変!これ見て!!『友枝中の仲良しさん』のコーナー!!」
さくらが驚いた顔で、その記事を指さした。小狼はそれを見て、ふっ、と目元をほころばせる。
「可愛い猫さんだよぉ~!ちゅーしてる!可愛い~!はにゃーん♡♡」
「うん。可愛い」
「・・・?ほぇ?小狼くん、猫さんはこっちだよ?」
「はにゃーんしてるさくらが、一番可愛い」
新聞記事ではなく、さくらの顔を見て小狼はひたすらに甘い笑みを浮かべた。その言葉に、さくらは「!!」と衝撃を受けたあと、林檎のように顔を真っ赤にして俯いた。


―――『友枝中の仲良しさん』コーナー。取材対象者募集中です―――。

 

 



END


 

 

リクエスト企画第一弾!

「第三者視点が好きなので、女の子から小狼くんのモテる理由を語って欲しいです」というリクエストと

「放課後の夕暮れの教室で初々しい(2,3回目くらいの)キスシーン」というリクエストを掛け合わせたお話になりました♪

モテる理由を語って・・・なくてすいません(;'∀')こんな感じになりましたが、楽しんでもらえたら嬉しいですー!

 

 

2019.10.11 了

 

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