―――間違えた。
泣きだしそうな笑顔を見て、そう思った。
後悔した。こんな筈じゃなかったんだ。ただ、喜んでもらおうと思っただけなのに。
結果的に、とんでもない間違いを犯したのだと、気付いた。
(・・・さくら!)

今日は、愛おしい彼女の誕生日。









SURPRISE! ~春の陣~









 

「李くん、最近何か悩んでいるね?」
問いかけられて、小狼はひとつ瞬いた。休み時間の喧噪の中、次の授業の準備を終えて、頬杖をついて考え事をしていた時だった。
山崎が気配もなく隣に来たかと思ったら、突然にそんな事を聞いた。
何も考えていなさそうに見える細い目は、意外と洞察力があって鋭い。言い当てられて、小狼は気恥ずかしそうに視線を落とした。
「・・・別に」
「嘘つけ!!」
小狼の返事にそう返したのは、山崎ではなく西だった。小狼は、訝し気に眉を顰める。
いつの間にいたのか、山崎の後ろから顔を出した西が、面白いものを見つけた子供みたいに笑っていた。小狼は溜息をついて、頭を掻く。
前のめりになる西の肩を抑えて、賀村が言った。
「今週末の木之本さんの誕生日の事、だろ?」
「・・・・・」
「うっわ。李くん、すごく嫌そうな顔した」
「・・・うるさいな」
「お前、去年も同じ時期に悩んでただろ!俺達だっていい加減覚えるって。さくらちゃんの誕生日、土曜日だろ?今年は、どんなプレゼントにするんだ!?」
まるで自分が主役のような浮かれ具合で、西は聞いた。その問いかけに、小狼の眉間の皺が更に深く刻まれたのを、山崎と賀村は見た。それだけで、大体の事情は察する。
「まだ決まってないのか・・・プレゼント」
「っ!い、今、考えているところだ。お前らに心配されるような、ことは・・・」
その先の言葉をぐっと飲み込むと、小狼は仏頂面で教科書をパラパラと捲った。
まさに図星で、さくらの誕生日が週末に控えているというのに、全く用意が出来ていなかった。
毎年、プレゼントには悩む。何をあげたら喜ぶか、何をしたら一番の笑顔が見られるのか。さくら本人に聞いたら、「なんでもいいよ」と笑うに決まっている。実際、きっと何をあげても喜んでくれるだろう。だけど、それじゃ自分の気が済まない。
一年に一度の、大切な日。大切な人の生まれた日を、祝福したい。めいっぱいに、喜ばせたい。
考え出すと、妥協が出来なくなって、なかなか決めきれない。そうこうしているうちに、期日は迫ってきていた。
目に見えて焦る小狼に、友人達三人はそれぞれ顔を見合わせた。確か、去年も同じような光景を見た気がする。内心で、呆れるような微笑ましい気持ちになるような。
苦笑する山崎と賀村の横で、西が勢いよく小狼へと言った。
「こういう時は、サプライズだ!!当日まで内緒にして、油断したところを『わーっ!』と驚かせるのがいいんだよ!!」
西の大きな声に、クラス中が何事かと目を向けた。
常であれば、小狼も適当に流すのだけれど、今回はさくらの誕生日がかかっている。藁にでも縋る思いで、西の提案に食いついた。
「サプライズ・・・?」
「そう!サップラーイズ!!今年は誕生日忘れてた~って顔してさ、実は覚えてた!忘れるわけねぇじゃんっ!!って感じで、今までにないようなプレゼントあげるんだよ!!一回沈んでから盛り上がるから、喜び度もハンパない筈!!」
西の言葉を真面目な顔で聞いていた小狼は、なにやらぶつぶつと呟き始めた。その様子を見て、山崎は一抹の不安を覚える。
「あのさ、李くん。人には向き不向きってのがあるから・・・」
暴走を止めようと言いかけた言葉は、思わぬところからの援護射撃で両断される。
「ねぇねぇ!サプライズって聞いたけど、こういうのはどう!?」
話に割って入ってきたのは、クラスメイトの女子だった。その手には、煌びやかなファッション雑誌。小狼の机の上に雑誌を広げると、とんとん、と指でさした。
「特注でこういうサービスがあるんだって!こういうのされたら、女子は嬉しいよ~!私だったら泣いちゃう!」
「・・・本当か?」
「うおっ!でもこれ、結構いい値段するぞ?」
「それは問題ない。・・・悪い。この雑誌、少し借りていてもいいか?」
興奮するクラスメイトへ、小狼は相変わらずの無表情で言う。「もちろんいいよ!」と快く雑誌を渡されて、小狼はそれを食い入るように読み始めた。
その肩を、ぽん、と叩いて。賀村が言った。
「お前、大丈夫か?サプライズって結構難しいぞ」
その言葉に大仰に頷いて、山崎も続ける。
「うんうん。李くん、隠し続けられる?当日は木之本さんとデートするんでしょ?『これ』をあげるまで、黙っていられるかなぁ」
二人の言葉に、小狼は眉根をきつく寄せた。確かに、隠し事や嘘は苦手だ。素直に感情を向けてくるさくらに、それが出来るだろうか。
不安からかいつもよりも小さくなった小狼の背中を、西が思い切り叩いた。
「痛っ・・・!」
突然の痛みに顔を強張らせる小狼に、西は満面の笑顔で親指を立てた。
「俺達に任せとけって!!当日は、全面的にお前に協力してやるよ!!」
その言葉に、一拍置いて山崎と賀村が目を瞬かせる。
「えぇ・・・?」
「俺、達・・・?」
「だから、大船に乗ったつもりでいろよ!李っ!!」

そんなわけで。生まれて初めての、サプライズ大作戦が幕を開けたのだった。








ピカピカの晴天。どこまでも広がる青空と、爽やかな風。綻びはじめた桜の花が、揺れる。
心地よさに目を閉じた小狼の耳に、待ち望んだ人の声が聞こえた。
「小狼くーん!」
声のした方を振り向くと、さくらが笑顔で手を振っていた。
栗色の髪や、可愛らしく結ばれたリボン、チェックのスカートの裾が、ふわふわ揺れて。それを見ただけで、小狼の心は幸せに満たされた。
駆け寄ってくる彼女へと近づいて、小狼は優しく笑った。
「おはよう、さくら」
「おはよう!えへへ、いいお天気だね!」
「ああ」
走ってきたせいで、少し乱れた髪。赤らんだその頬に触れたくなって、小狼は堪える。
(今日は、自制しないといけない・・・。じゃないと、つい口を付いて言ってしまいそうだ)
―――そう。今日はまだ、言ってはいけない『あの言葉』。本当は、誰よりも早く伝えたいけれど。
(我慢、しないと)
さくらを、喜ばせたいから。
小狼は決意を固め、小さく深呼吸をした。
何も気づいていないさくらは、小狼の様子を見て不思議そうに首を傾げる。その仕草が可愛くて、胸が苦しくなった。固い筈の決意が、またもぐらぐら揺れる。
ぱっ、と目を逸らして、さくらへと言った。
「髪、少し乱れてる」
「ほぇ?・・・あっ、ほ、本当だ」
さくらは恥ずかしそうにして鏡を取り出すと、手櫛で直した。
少し素っ気なくなってしまっただろうか。不安になる。今日は、いつもと勝手が違う。彼女に気付かれないように、自然に。『その時』を、迎えなければならない。
小狼は気持ちを整えると、再びさくらへと向き直った。
「じゃあ、行くか。見たい店があるって言ってたよな」
「・・・うん!」
少し不安気だったさくらの顔も、ぱっといつもの笑顔になった。それに内心で安堵して、小狼は頷く。
電車に乗って、新しく出来たショッピングエリアへと向かう。休日だから、電車も街も混んでいた。小狼は、満員電車の中でさくらを守るようにして立つと、窓の外を見つめた。
流れる景色を見ながら、今日の事を考える。うまくいくだろうか。さくらは、喜んでくれるだろうか、と。無意識に、考え込む。
ふと、視線を感じた。
自分の腕の中にいるさくらが、悲しそうに瞳を揺らして、こちらを見ていた。その表情に、小狼は驚く。
「どうした?さくら」
問いかけると、さくらはハッとして、いつもの笑顔に戻った。「なんでもないよ」と言う彼女に、胸がチクリと痛む。
(本当にこれでいいのか?今になって、不安になってきたぞ・・・)
慣れない『サプライズ』を控え、胃までキリキリと痛み出す。眉を顰めて、痛みをやり過ごそうと再び窓の外を見た。その険しい横顔を、さくらがジッと見つめている事には気付かずに。
「・・・大丈夫か?あの二人」
「うーん、不安だなぁ」
「大丈夫だって。俺らがサポートしようぜ!」
ひそひそと、囁かれる声。少し離れた場所から見守るその影は、二人に見つからないようにと、人混みの中に紛れるのだった。







新しいショッピングエリアは、予想以上の人で溢れていた。入り口の様子を見て、さくらが僅かにたじろいだのを感じる。
小狼が目を向けると、眉を下げて言った。
「人、いっぱいいるし・・・今日は別のところに行こう?」
「でも、さくらの好きなクマの店があるんだろ?先週、嬉しそうに言ってた」
「そうだけど・・・」
さくらの視線は、人混みの奥にある目当ての店へと向かう。そこに行くには、あの混雑を抜けていかなければならない。瞳には、恐怖の色さえ見える。足は、前にも後ろにも動かない。迷っているのは明白だった。
小狼はそれを見て、よし、と一人頷くと、さくらの手を取った。驚くさくらに、笑って言う。
「大丈夫だ。ちゃんと、連れていくから」
「・・・!小狼くん」
さくらは顔色を明るくすると、繋いだ手にぎゅっと力を込めた。
小狼は、先導するように前を歩く。入り口近くの人混みでは、さくらの肩を抱いて、無理のないスペースを探して歩いた。
一番混みあっている場所を抜けると、二人は同時に息を吐いた。揃ったタイミングに思わず目を合わせ、同じ笑顔になる。
「じゃあ、行くか」
「うん!」
人混みを抜けても、二人の手は繋がれたまま。周囲の羨む視線も気にせずに、仲睦まじく歩いていった。
目的の店だったテディベアショップを、さくらはこれでもかというほど、堪能した。
たくさんのぬいぐるみやグッズをひとつずつ見ては、隣にいる小狼へと話しかける。いつも以上に浮かれて見えるのは、好きなテディベアに囲まれているから、だけではないのだろう。
(・・・今日は、誕生日だから)
さくらの笑顔を見ていたら、堪らない気持ちになった。
まだ、伝えていない。こんなに近くにいるのに。特別な日に、一緒にいる事を選んでくれたのに。なのに、彼女にまだ伝えていない。
(おめでとうって、言いたい)
小狼は、顔を強張らせて、拳を握りしめる。
言ってしまえば、今日の計画は全て台無しになる。『サプライズ』なのだから、我慢しなければならない。
「小狼くん?どうしたの・・・?」
様子が変わった事に気付いて、さくらが問いかける。
不安に揺れる瞳を、笑顔に変えたい。今すぐにでも喜ばせたい。強い衝動に駆られ、小さなクマのキーホルダーを持っていたさくらの手を、それごと握る。
真剣な瞳で見つめると、さくらの表情が変わった。
何かを、期待しているように。
「さくら・・・」
「な、に・・・?小狼くん・・・」
ごくり。喉が鳴る。
小狼は、ゆっくりと口を開いた。
「今日、誕・・・」
「―――はいはいっ!ごめんなさいね、ちょっと見せてねっ!!」
突然に割り込んだ人物に、二人はぎょっとした。接近していた距離は、その人物によってあっという間に離される。後ろにある陳列ケースに手を伸ばし、あれでもないこれでもない、と大きな声で騒ぐ。
さくらは驚きに目を瞬かせ、その人をジッと見つめた。しかしその瞬間、小狼が強く手を引いた。
「もう、充分だろ。次の店に行こう」
「え?あ、でも。小狼くん、今の人の声、どこかで聞いた事あるような・・・?」
「気のせいだろ!」
さくらの手にあったキーホルダーを素早く会計して、半ば無理矢理に店の外に出た。小狼は青い顔で、こっそりと後ろを振り返る。
そこには。女物のスカーフを頭に被りサングラスをかけた、明らかに怪しい人物が、こちらに向けて親指を立てていた。
小狼はそれを見て、頭を抱える。
不思議そうにするさくらの背を押して、その場から離れさせた。
(あ、危なかった・・・)
サプライズの事を忘れて、言いそうになった。全部を台無しにしても、あの瞬間、言ってしまいたくなった。こんな衝動的な行動を起こしてしまうほどに、無理がきているのだろうか。
小狼は、どっと疲れた顔で溜息をつく。
「小狼くん?大丈夫?」
「え?あ、ああ!全然、大丈夫だ」
「さっきのキーホルダー・・・」
「あ、ごめん。本当は、もっとちゃんと選びたかったよな」
自分の勝手な行動を後悔する小狼に、さくらは首を横に振った。先ほど購入したばかりの、テディベアのキーホルダー。それを袋から出して、さくらは嬉しそうに笑った。
「これが一番、可愛いなって思ってたの。今日、買えてよかった。ありがとう小狼くん!」
思ってもみなかった感謝の言葉と笑顔に、小狼の心臓が大きく脈打った。
言いたい。言えない。抱きしめたい。出来ない。―――嫌だ。全部投げ出してしまいたい。無駄にしてもいい。
「さ、さくら・・・っ」
「ほぇ?」
さくらの手を両手で握ると、小狼は赤い顔でじっと見つめた。雰囲気が変わった事に、さくらの顔にも緊張の色が走る。
人が行きかう往来で、手を握って見つめあう。ひそひそと囁かれる声や視線にも構わず、二人の世界へと突入する。
しかし、その時。
「おっと、ごめんなさい!!」
小狼の後ろから、人がぶつかってきた。急いでいるのか、その影はすぐに人ごみに見えなくなったけれど。二人きりの世界はその瞬間に壊れ、小狼は我に返った。
握った手をすぐさま放すと、さくらは寂しそうに眉を下げた。青い顔で黙り込む小狼を、心配そうに見つめる。
「小狼くん・・・?今日、具合悪かったりする・・・?」
「そ、そんな事ない。元気だ」
「そう?なら、いいんだけど・・・」
笑顔まで引き攣っている気がする。さくらの視線が居た堪れなくて、小狼は誤魔化すように、どうでもいい事を喋った。
いつになく饒舌な小狼を見て、さくらの表情は心なしか沈む。
「大丈夫だったかなぁ。今の、思い切り邪魔しちゃったけど」
「李も、そろそろ限界か?」
「いや!!まだだっ!!あともう少しなんだからなっ!!頑張れよ、李!!」
影から送られる熱烈なエールに気付くことなく、二人は遅めの昼食を取るべく、レストランへと移動した。




密かに調べていた、さくらの好きそうなイタリアンの店を訪れた。
味も量も満足で、デザートまで美味しく平らげた。ショートケーキの苺を頬張るさくらを見ていたら、またも、あの衝動に駆られた。
(だ、ダメだ。堪えろ。まだ早い。・・・日が暮れるまでの辛抱だ)
フォークを持つ手が、震える。それに気づいたさくらが、心配そうに視線を向けるけれど、小狼は気付かなかった。
―――もうすぐだ。もうすぐ、伝えられる―――。








時計を見る回数が増えた。時間が近づくにつれて、緊張と動悸が増す。
怪しまれないよう、適当な理由をつけてその場所へと連れていく。電車を乗り継いで、町から少し離れた。
日が暮れて、西の空が赤く染まる。駅を出て少し歩くと、広く視界が開けた。河川敷で遊んでいた子供達が、はしゃぎながら帰っていく。沈みゆく太陽が、川面をキラキラと光らせていた。
それを見て、さくらが穏やかに笑った。
「・・・綺麗。もう、日が暮れるんだ。早いな・・・。今日が終わっちゃうね」
寂しそうに言ったさくらに、小狼の心臓がドキリと跳ねた。これから起こる事への緊張なのか、その寂しそうな横顔に惹かれたからか。どちらにしろ、もうすぐ時間になる。
その時。さくらが、くるりと振り向いた。
「ね、小狼くん。お願いが、あるの」
「え?」
「今日・・・、まだ帰りたくない。一緒にいても、いい・・・?」
真っ直ぐな瞳に見つめられて、小狼は硬直した。問いかけに、すぐに頷きたくなった。駆けだして、抱きしめたい衝動に駆られる。
だけど。
小狼は、奥歯を噛みしめて、言った。
「ごめん・・・今日は、用事があるんだ」
きりり、と。胃が痛んだ。
さくらの背中越しに、夕陽が沈んでいく。音もなく、静かに。辺りに、春宵の幕がかかりはじめる。
「そっか・・・。じゃあ、仕方ない、ね。夕陽綺麗だった・・・。ありがとう、小狼くん」
さくらの笑顔を、夕闇の中で見た瞬間。
―――間違えた。
泣きだしそうな笑顔を見て、そう思った。
後悔した。こんな筈じゃなかったんだ。ただ、喜んでもらおうと思っただけなのに。
結果的に、とんでもない間違いを犯したのだと、気付いた。
(・・・さくらを驚かせる為に、さくらを悲しませるのか?俺は、一体何をしようとしていたんだ)
帰ろう、と。さくらが言った。
横を通り過ぎて、駅の方へと向かう。小狼は棒立ちのまま、その背中を見つめた。
―――違う。俺がしたかったのは。さくらに、あげたかったものは。
「・・・さくら!!」
大きな声で名前を呼ばれて、さくらは肩を震わせる。驚いて振り返ると、小狼が目の前にいた。
「誕生日、おめでとう」
「・・・!」
強張った顔で言われて、さくらは戸惑う。それでも、今日一日待ち望んだ言葉に、嬉しそうに顔を綻ばせた。
「小狼くん、覚えてくれてた、んだ?嬉しい・・・」
「忘れるわけないだろ!」
思わず声を荒げた小狼に、さくらは小さく震える。小狼の顔は、一瞬泣きそうに歪んで。さくらの頬を、両手でそっと包んだ。
「喜ばせようとして、馬鹿な事をした。・・・ごめん。最初から、素直に言えばよかった」
「え・・・?小狼くん・・・?」
小狼は、さくらを切なげに見つめる。吐息が触れるくらいに近づいて、言った。
「今まで、誕生日を特別に思ったことはなかった。自分のも、他人のも。でも、今は違う。・・・さくらの生まれてきてくれた日は、何よりも特別で、大切だ。さくらを好きになって、初めてそう思えるようになった」
「・・・っ!!」
無理矢理に塞き止めていた気持ちが、溢れた。
我慢して、必死に堪えて。その間に、積もっていった気持ち。いつもは恥ずかしくて言えないのに、自然と零れ落ちた。
「誕生日、おめでとう。さくら。俺は、お前が大好きだ」
小狼の声が届いた瞬間、さくらの瞳から涙が零れた。


―――ひゅー・・・

―――ドーンッ


「・・・花火、あがったけど。気付いてないな、あの二人」
「二人とも、お互いしか見てないね~。結局、李くんフライングしちゃったし」
「あぁぁっ!!勿体ねぇ!!俺、二人に教えてくる!!」
「「やめておけ」」
飛び出していこうとする西を抑えて、山崎と賀村は苦笑を浮かべる。
抱きしめ合う二人の後ろで、花火がまた上がった。ハート形の閃光が、夜空を彩る。
通りかかった人々が、みんな足を止めて見ているのに。一番に見せたかった彼女の視界は、抱きしめた彼によって塞がれている。
何よりも嬉しいプレゼントをもらったさくらは、嬉しそうに笑って、小狼を見つめた。
「・・・小狼くん、ご用事はいいの?」
「ああ。今、終わった。・・・このまま、一緒にいよう。さくら」
火薬の匂いが、風に乗って二人の元に届く頃。
ゆっくりと、甘く優しい口づけが落ちるのだった。

 

HappyBirthday!!

 







END

 


さくらちゃん、今年もおめでとう!!(≧▽≦)誕生日なのにいつも悲しい感じにさせてごめん・・・!でも最後はめいっぱいに幸せに♡

サプライズをテーマに、春の陣・・・ということは、夏の陣もあるわけでして。そちらも楽しみにしてもらえたら!

とりあえず、お誕生日おめでとぉぉぉ!!今年も愛してます♡♡♡

 


 


2017.4.1 了

 

気に入っていただけたら、ポチリとどうぞ!


戻る